三種の神器が示す、三つの徳

鏡の神事という記事で、鏡の話を書きましたが、鏡は三種の神器の1つですね。

三種の神器 - Wikipedia
三種の神器(みくさのかむだから、さんしゅのじんぎ)とは、天孫降臨の時に、天照大神から授けられたとする鏡・剣・玉を指し、日本の歴代天皇が継承してきた三種の宝物である。


神器とは神の依代(よりしろ)を意味する。

天皇の即位に際し、この神器の内、鏡と剣のレプリカ及び勾玉を所持することが日本の正統なる帝として皇位継承の際に代々伝えられている。但し過去には後鳥羽天皇など神器がない状態で即位したケースもあり、必ずしも即位の絶対条件ではない。

三種の宝物とは、「八咫鏡」・「八尺瓊勾玉」・「天叢雲剣」(「草薙剣」)のこと。神器という言い方が一般化したのは南北朝時代ごろからと言われている。

(略)

古代において、鏡、玉、剣の三種の組み合わせは天皇家だけに特有のものではなく、一般に支配者の象徴であったと考えられ、仲哀天皇熊襲征伐の途次、岡県主の熊鰐、伊都県主の五十迹手らは、それぞれ白銅鏡、八尺瓊、十握剣を差し出して恭順の意を表している。また景行天皇に服属した周防国娑麼の神夏磯媛も、八握剣、八咫鏡、八尺瓊を差し出している。また壱岐市原の辻遺跡では最古の鏡、玉、剣の組み合わせが出土されている。

鏡は日(陽)で、勾玉は月(陰)であるとも、勾玉は胎児の姿だとも言われます。

「鏡は知力、玉は財力、剣は武力を表しているのではないか」ということを書いた本を昔に読んだことがあって、そういうものだと思っていたのですが、今改めて調べてみると必ずしもそうとはいえなかったでした。

Wikipediaの続きに

儒学伝来以後、鏡は「知」、勾玉は「仁」、剣は「勇」というように、三種の神器は三徳を表わすという解釈もある。

というのがありました。

儒学の思考法だと、勾玉は「仁」なんですね。「仁」は愛情や優しさのことですね。財力が「仁」になる?いまいちピンとこないです。鏡は「知」、剣は「勇」というのは異論ないです。

仁 - Wikipedia
仁(じん)とは中国思想における徳の一つ。仁愛。とくに儒家によって強調されており、孔子がその中心にすえた倫理規定、人間関係の基本。

おもに「他人に対する親愛の情、優しさ」を意味しており、儒教における最重要な「五常の徳」のひとつ。また仁と義を合わせて、「仁義」と呼ぶ。古代から現在に至るまで中国人の倫理規定の最重要項目となってきた。中国の伝統的な社会秩序(礼)を支える精神、心のあり方である。

孔子

  • 儒学を大成した孔子は君子は仁者であるべきと説いた。

孟子

  • 性善説に立つ孟子は惻隠(そくいん)の心が仁の端(はじめ)であると説いた(四端説)。惻隠の心とは同情心のことであり、赤ん坊が井戸に落ちようとしているとき、それを見た人が無意識に赤ん坊を助けようと思う心であると説いた。

なお、孔子は、『論語』のなかで「仁」について明確な定義をおこなっておらず、相手によって、また質問に応じてさまざまに答えている。言い換えれば、儒家の立場においては「仁」とは人間にとってもっとも普遍的で包括的、根源的な愛を意味するものとして考えられてきたのであり、「孝」や「悌」、「忠」なども仁のひとつのあらわれだと主張されているのである。


天皇家と「仁」

日本においては清和天皇が歴代天皇として初めて名前にこの「仁」を用い、天皇家の重要な徳目の一つとみなされてきた。多く、「○仁」として「○ひと」と読む。後冷泉天皇以降の歴代天皇桂宮家、有栖川宮家および閑院宮家では「仁」を「通字」とすることが慣例となっている。

また、「聖帝」と言われた仁徳天皇の事跡の多くは、この仁の美徳にかなったものであると思われる。

「仁」というのは結局のところ、人を集める力なのでしょう。愛情や優しさのある人に人は集まります。確かに財産に集まる人もいて、財と仁に似ているところもあります。しかし、金目当て人は他人のために行動することができないし、財産は増えたり減ったりしますので、財産が無くなれば去っていきます。いざというときに頼りになるのは愛情や優しさでつながった人です。

歴代の天皇陛下が「仁」をお名前にしているのは、感慨深いです。皇室が国民に守られてきたというのは、多分そういうことです。
そして社会はトップにいる人を模倣するものです。


話が長くなりましたが、勾玉は単に財力を意味しているのでは無いようです。天岩戸の話では、鏡だけではなく、勾玉もいっしょに榊に付けて、使用されています。鏡が岩戸の中の神を引きつけるものなら、勾玉は外の神を集めるためのものかもしれないですね。財以上に、仁を持つようにありたいものです。


松浦彰夫 拝


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