悲鳴を上げる中国農業:日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090507/193943/?P=1の概要です。中国の人も大変みたいですね。技術的な転換が求められるが難問が山積です。
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- 作者: 高橋五郎
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2009/02/13
- メディア: 新書
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「おふくろの味」ではなく「袋の味」が幅を利かす日本
- 加工食品を中心とした「袋の味」になっている。
- 原材料は見えにくくなり、食品の安全性にかかわるリスクは大きく広がる。
- 加工食品の多くは中国産の原料を使用し、中国で製造している。
- 中国農業の現場を見なければ、食生活の崩壊や自給率改善について何も言うことができない。
地中の塩分が溶け出した地下水
- 1997〜98年を境に、中国は食糧不足の国から食料過剰の国に転換した。
- 98年頃に穀物生産の25%が中国で作られるようになり、中国では食べ物が余り始め、食品を輸出入する企業が介在し始めた。
- 日本企業は技術移転をし、中国は農作物や加工品を輸出するようになった。
- 90年代の後半以降、特に2000年以降にこうした変化が加速していった。
- 中国の北と南を長江で分けると、北にある水の量は中国全体の18%に過ぎないから、北は水不足になりやすい。
- 最近では、井戸水が枯れ始めた。山東半島から北で顕著である。
- 井戸をより深く掘らなければならないが、井戸が深くなるほど、地下に浸透していた塩分が溶け出してしまう。
- 200〜 300メートルの深さの井戸の水を舐めると、アルカリ臭く、真水とは違う味がする。
まるで“下水”の水を畑にまく惨状
- 北の方は河川灌漑が少なく、ため池が多いが、そのため池がかなり汚れている。
- ため池全体をアオコが覆っており、水が全く見えない。そこに、ホースを突っ込んで、ポンプで揚水し、畑に水をまいている。
- 中国の農村はほとんど浄化設備がない。そのため、油、石鹸、洗剤、雨水、し尿などが一気にため池に行ってしまう。アオコが繁茂しているのはため池の富栄養化が甚だしいため。悪臭もすさまじい。そういう水を畑にまいている。
- 植物は水があれば育つが、食べ物として相応しいかどうかは別問題。
- 水がないから、浄化槽に行くべき水をためて使う、という状況にならざるを得ない。
村の周辺を流れる「コーヒーよりも黒い川」
- 農民も企業も使っている水の条件は同じ。川自体が汚れている。
- 100メートル手前から悪臭がした。
- 汚染でいうと、長江もひどい。上海の河口に行くと、ゴミだらけ。上流から流れてきたゴミがたまっている。
- 上流の武漢の遊覧船では観光客が食べた食べ残しをそのまま川に捨てていた。ウェートレスがテーブルクロスごと丸めて川に捨てる。
水だけでなく、土も荒れ始めた
- 土も荒れている。
- 水田は、土を触って、部分的に固まりがあれば、その水田はよく耕していないということ。逆に、よく耕している水田はそういう固まりがない。
- 畑であれば、土の硬さやにおいで判断する。
- グラウンドのようにカチカチで、指を突っ込んでも取れないところもよくある。
- すべてではありませんが、そういう土で野菜を作っている。
- においで農薬の有無や肥料の中身などは分かる。
農地に愛着を持たない農民は土を愛さない
- 農地所有制度が私有ではなく、公有、あるいは国有のため、土が荒れてしまう。
- 私有制度であれば、所有者は農地に対して継続的な投資を行う。投資をすれば、生産量の増加という見返りが入ってくるから。
- ところが、公有ないしは国有だと、農地に誰も投資をしなくなる。その結果、農地は荒れていく。
- 人糞肥料をまくため、さらに土が荒れる。
- 人糞には、窒素、リン酸、カリといった肥料成分が豊富に含まれており、肥料としての効果は確実に見込める。ただ、中国の場合、人糞肥料を生のまま畑にまいてしまう。
大量の農薬散布は人糞肥料が原因
自分の人生を自分で選べない中国の農民
- 中国の農村では、どこを見ても農民を集める施設がない。農業専業協会という農協のような団体があるが、一人ひとり相対で教えていくしかないので、ものすごい時間がかかる。
- なぜ農民が悲惨かというと、彼らは何も持っていない。中国の農民は自分の人生を自分では選べない。都市に出ようと思っても、農民戸籍で出ていくしかない。仕事は建設労働者や運送業者、ホテルの下働き、食堂のウェートレスといったところ。こんなものしかない。
都市住民と農民の格差は約3倍
- 1978年に改革開放路線が始まる。実は、82年まで農民と都市住民の格差は縮小していましたが、83年以降、この格差がぐーっと拡大していった。その要因は海外からの投資の急増。
- 工業の場合は技術革新によって生産性を大幅に高めることができるが、自然の摂理に左右される農業は稲作の期間が半分になったりはしない。工業は技術革新によって、資本は何回転もするが、農業は同じように回転数を高めることはできない。
- 都市住民の年間所得は1万2000元。それに対して、農村は約4000元に過ぎない。
- 社会保障制度は整っていない。1人当たりの農地面積も日本の4分の1程度しかない。
- 農業には未来がない。自分の息子、娘には何としても都会に出てもらって、いい暮らしをしてほしい、と考えるのは親の当然の愛情表現。そのため、わずかな農地さえ手放す農民が増えている。
南から北に移動する「渡り鳥農民集団」
高リスクの農業を前提に成り立つ日本の食卓
- 担い手という面では問題ないかもしれないが、安全面や品質は不安が残る。
- 中国の水や土は疲弊している。農民も土地離れを進め、工場労働化し始めた。彼らには社会保障もなければ、将来展望もない。企業が潰れてしまえば一蓮托生で路頭に迷う。
- もはや中国は生鮮や冷凍、加工など広い意味で日本の食料庫になっている。今の日本の食卓はリスクの高い農業を前提に成り立っている。そのことを忘れるべきではない。
次はどんな調査をするつもりですか。
- 中国の農民の貧困を集中的に調べようと思っています。貧困の現実や原因、将来の貧困解消の可能性などについて。貧困から抜け出すのは難しいけど、貧困解消のために地元の人々がどれだけ努力しているかを知りたいんですよ。早く行きたくてウズウズしています。
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松浦彰夫 拝
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